喪失(Loss)から回復へ

大切な人との別れや失恋、愛しいペットの死、大切なものを失くす経験では私たちは深い悲しみに沈みます。また事故や病気・老化などで健康を損なうことは思い描いていた夢をあきらめざるを得なくなる場合もあり、無力感や失意で心が重く心的苦痛を感じます。そのような体験をして、悲しみに打ちひしがれた状態から回復するのは容易なことではありません。

特に大切な人を亡くした悲しみから立ち直ることは相当苦しいことです。立ち直る鍵は、悲嘆のプロセス(グリーフワーク)にあるといわれます。そのプロセスに沿って、自分の気持ちを整理したり、周囲から継続的なサポートを受けることが大切です。

グリーフワークでは、人の感情は次のプロセスをたどるとされています。

1)「ショック期」衝撃の段階 。対象を喪失し、情動や現実感覚の麻痺が起こる段階。涙も出ない、体の力が抜けるなどの身体反応が起こる時期です。

2)「喪失期」防御的退行の段階 。現実に直面するのが恐ろしいため、否認や現実逃避、退行などの心理的な防御反応が働く時期です。

3)「閉じこもり期」承認の段階 。辛すぎる現実に抑うつや、怒り、悲しみ、無力感、罪悪感、不安などあらゆる感情を示す時期です。この段階の苦悩を越えることで、徐々に現実が受け入れられるようになりますが、自分の価値観や生活の意味を失い、うつ状態に陥ったり無気力な状態になります。「何々してあげればよかった」と自責感に襲われることも特徴です。

4)「再生期」再適応の段階。 現実を受け入れ、悲哀感を乗り越え、新たな方向へ向かうようになる再出発の時期です。外界との繋がりを遮断することもありますが、反面いろんな人と過剰に関わろうとする場合もあります。これも正常な回復の状態です。

知っていただきたいのは、このような状態は必ず一定ではなく行ったり来たりすることがあり、人にはこうした感情の変化が起こりうるということを自覚していただきたいのです。

コントロールできない不快な感情はとても苦痛ですが、それが予測できることで苦痛を減らすことができます。今まさに悲しみの中にある人は、自分が今どこのプロセスにいるのか把握することも大切です。

そして、なによりも「しっかりと『悲しみきる』こと」です。「悲しい感情を表出したくなった時に、それをしっかり吐き出す」ことです。自らの感情を露出することが苦手な方も多いですが、このプロセスを経ないと、かえって心の不調が長期化するおそれがあります。始めは麻痺していた感情も湧き出してくるタイミングがあり、その時にしっかりと悲しみを味わい尽くすことが必要です。思い出の場所を訪れてみたり、写真をながめ思いっきり泣くのも良いのです。

ただ、その人との関係が強ければ強いほど苦難を伴いますので、この作業は一人では容易でなくつぶれそうになる場合があります。信頼するカウンセラーに話すことが重要です。

正直私自身も、死ではありませんが大きな喪失体験を経験しました。十何年間苦しい思いをしてきました。しかし今は、その出来事によって自分の生きる意味を与えられたような気がしています。

悲しみだけでは終わらない」そんな自分になりませんか。そんな人生を歩きませんか。是非福井ぴゅあカウンセリングルームにご相談ください。