<思春期挫折症候群>

思春期は、急激な身体の変化とホルモンバランスの変化がおこります。そのため今までの安定していたバランスが崩れることになります。思春期前後に何らかの挫折の経験がもとになって問題行動を起こす精神症状です。我が国特有とも言われています。

 うつ病や双極性障害や神経症など、心の問題を起こす背景に、思春期の問題が絡んでいることがよくあります。統合失調症やパーソナリティー障害なども、思春期の問題を指摘する学者もいます。
 これまでにあまり見られなかった新しい対応の青年期の精神障害を、青年期の問題に詳しい稲村は「思春期挫折症候群」と名付けました。
 症状としては、抑うつ状態、引きこもり、拘束や社会規範の無視、不登校、自殺企図、極めて一方的で自己中心的思考障害、ルーズな生活態度、意欲障害、行動の幼稚化、母親に甘え、母親が言うことを聞かないと怒り狂う、などを挙げています。
 性格としては、何事に対しても過敏で耐性にかける、真面目でよい子などが挙げられています。 カウンセリングでは、子どもが自らカウンセリングを受けに来ることは少なく、最初は親が来られることがほとんどです。その後、うまくきっかけを作って子どもが来るという形を作ります。
 こうしたケースで、粘り強くカウンセリングに通うことができた人は、最初の状態に比べれば圧倒的に現実に適応する良い状態に変わり、当初は拒否していた社会人として仕事に就いて、活躍している人もいます。

<母子分離不安>

母親から離れることに強い不安があり離れようとはしなくなります。また離れる場面では泣いて強い抵抗を示します。小学校低学年に比較的多く見られます。

乳幼児期から学童期にかけて、母親などの依存対象者との物理的・心理分離に伴う不安が現れやすくなり、これをどのように克服していくかがこの時期の心の発達課題とさえいわれます。
 分離不安は、乳幼児期に、母親から離れるのを嫌がりしがみつく体験を誰もがしますが、このときに母親が充分な愛情を注ぎ、子どもの中に安心感を育むことで、ある一定期間を過ぎると解消されるものと言われています。この克服を年相応になされていくことが大切なのです。
 もしうまく克服することが出来ずにいると、母親などが不在の時に過剰な反応を起こして、様々な身体的・精神的な症状や問題行動を示します。このような状態を分離不安といいます。分離に伴う不安を直接表現することよりも、身体症状や問題行動など、間接的な表現をとることが多くあります。
・身体的症状:頭痛・吐き気・腹痛など自律神経系のもの
・精神的症状:不安・抑うつ・怒り・無気力
・行動の問題:執拗なあまえ・夜尿・多動・乱暴な行動・父親やきょうだいに対して敵意のある振る舞い
・幼児退行現象・母親を監視、外出を嫌がりつなぎ留めておく、など。

〔対応〕
 親が子供の不安を理解して温かく受け止めることが大切です。根気よく続けることで、次第に症状が消失していくことが多いので、親子間のしっかりとした安心した関係を築いていきましょう。
 子どものカウンセリングでは遊戯療法や箱庭療法なども取り入れます。保護者は、親自身が抱えている問題があることで、子どもに向き合えない場合もありますので、親自身のカウンセリングを継続して行います。
 子どもの状態を正しく理解できるようになると、良好な親子関係へと変化していきます。

<リストカッティング・シンドローム>

 若者の間で、特に10代の女性の間ではリストカットのことを「リスカ」と呼び広がりを見せています。以前は、周囲の関心や同情を得るために衝動的に手首を切ると思われてきました。しかし、その裏には不安や葛藤が渦巻いている場合が多くあります。そのストレスから逃げ出したい思いからリストカットをしてしまうようです。
 英国のダイアナ妃が、拒食と過食を繰り返し何度も自殺未遂を繰り返したことから「ダイアナ症候群」とも言われています。

 リストカットとは、自分を傷つける自傷行為の中でも、特に”手首”を切る自傷行為(自己の身体を傷つける行為)のこと。使用されるものはハサミやカッターがほとんどで、傷のほとんどは手首の内側で数回試みた傷が多く、手首の他には、腕(アームカット)・首(ネックカット)・足(レッグカット)を切る場合もあります。
 リストカットに付随する症状として、摂食障害や神経症・なんらかの依存・引きこもり・うつ傾向の症状を示す場合があります。また境界性人格障害と診断されるケースが多いようです。
 リストカットは自殺しようとしているのではなく、むしろ生きている証として行なう行為だとされています。生きる証とはいえ、死亡する割合も約4%と少ないながらも確かにありますので、危険な行為であることに代わりはありません。リストカットは繰り返されることが多いため、習慣化する傾向があります。
 ではなぜ、自分を傷つける行為を繰り返すのでしょうか?
リストカットの原因は、①特に母と子の関係性によって”親が自分を置いてどこかへ行ってしまうのではないか”という恐れを抱く「分離不安」、②ストレスが根底にあると言われています。分離不安が原因の場合、子どもが上手に分離不安を卒業できていない場合、その後の人生において分離不安を持ち越すことになります。揺れ動く世代の思春期あたりから、自分以外の存在との一体感を求めますが、そういった「愛情対象が失われた」と思ったとき、リストカットという行動が起きると言われています。例えば「理解してもらえなかった」「裏切られたと思った」などです。その背後には、強い「見捨てられ感」が存在しています。精神的なストレスを抱え時に対処の仕方が見つからず行動に及んでしまうことがあります。
 私はカウンセリングの場面でたくさんのリストカットをしている人に出会ってきましたが、本人に聞くと「痛くない」また「切って血を見るとスッキリとする」と仰います。リストカットの方とのカウンセリングでとても効果があったのは、あらかじめ相談者様に所定の用紙をお渡しし記入していただきます。その用紙をもとに、リストカットしてしまいたい気持ちが起きた時・、我慢した時・どう対処して我慢できたのかなど、気持ちを受容しながら、カウンセリングの中で話し合っていくのが効果的でした。

<リストカットを見つけるチェックリスト>
□ 1. 血のついたティシュがベッドの上や枕元に散らばっている。
□ 2. ごみ箱に血のついたティシュがつめこんであった。
□ 3, 暑いのに長袖を着て腕を出さないようにしている。
□ 4. 手首のあたりにリストバンドをしている。
□ 5. カミソリやハサミなど、刃物類が自室においてある。
□ 6. 手首や腕にうすい赤い線が数本入っているのを見つけた。
□ 7. 手足をかきむしったり鉛筆で突いたりした後がある。
□ 8. 「○○さんがね、リストカットしたんだって」と言い、親の反応をうかがう。
□ 9. リストカットのブログをインターネットでよく見ている。
□ 10. 登校する(職場へ行く)のがしんどそうだが、休もうとしない。
□ 11. 「顔色悪いね、ツライんじゃない?」と聞いても「いや、大丈夫」と言う
□ 12. 小さい頃から不平不満を口にしない良い子だった。
□ 13. クラスの友人からは「しっかり者」と頼られている。
□ 14. 怒りや悲しみの感情をあまり顔に出さない。
□ 15. まわりの人はビックリしている場面でも、本人はどこかシラーとしている。
□ 16. 小さいころからあまり親に甘えたことがない。
□ 17. 親が心配していても「別に」「ほっといて」と答えることが多い。
□ 18. 友人から頼み事をされると「イヤ」と言えず、疲れていても引き受けてしまう。
□ 19. 「学校を休むことは許されない」という考えをしっかりと持っている。

○こうしたことが多数あると思われる場合は、専門医への受診やカウンセリングをお受けください。

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